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第800話

Author: 宮サトリ
さっきまで浩史がここで会議をしていたのを見れば、向こうがどれだけ仕事で彼を追い詰めているかは一目瞭然だった。

「そうだな、確かにこの数日会社の仕事をかなり滞らせてるな」

「じゃあ......」

「だから、君はどうやって補償してくれるんだ?」

え、ちょっと待って、なんで話がこうなっちゃうの?

本当は会社に戻った方がいいよって言いたかっただけなのに、まさか『補償』を求められるなんて!

由奈は目を丸くして言った。

「私なんて、ただの平社員よ?私が何を補償できるっていうの?」

それを聞いた浩史は口元に意味深な笑みを浮かべた。

「何もないのか?自分をそんなに低く見るのか?」

何か変な感じ......

彼女はきゅっと唇を引き結び、真剣な顔で彼を見た。

「もしかして......」

「何?」

「私が会社に戻ったら、今回のことを口実に、私の残業を倍にしたり、ボーナスカットしたりするつもりじゃないよね?いや、でも今回助けてくれたし、多少搾取されても仕方ないか......」

最後には、不満そうに口を尖らせた。

彼は眉間を指で押さえ、頭が痛いと言わんばかりの表情をした。

まったく、ここまで察しが悪いとは思わなかった。

まあ、いい。ゆっくり時間をかけてわかればいい。

浩史はイヤホンを外し、話題を変えた。

「彼女の件、まだ進展はないのか?」

「......まだ」

由奈の目は一気に沈んだ。

「最初は瑛介ならすぐに見つけてくれると思ったんだけど。でも場所を絞れたって言ったのに、もう何日も経ってるのに......悔しくて」

「探すには時間がかかる。見つけても、いきなり動けば逆効果だ。周到に準備しないと」

そう言われて、由奈は意外そうに浩史を見た。

「......つまり、瑛介はもう場所を把握してるけど、準備してるだけかもしれないってこと?」

浩史は首を振った。

「ただの推測だ」

由奈は、再び肩を落とした。

弥生は昨夜、友作から受け取ったメモを証拠隠滅したものの、翌朝目覚めても心臓の鼓動は落ち着かなかった。

それでも、いつも通りひなのと陽平を連れて階下へ降りて朝食を取った。

三人は相変わらず弘次には一言も話さない。

弘次もそれを咎めることはなかった。

弥生たちが食事を終え、席を立とうとしたとき、弘次の声が背後から飛んできた。

「弥生」
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